さがしものの話

探し物をしていた。「それ」をさがしていた。

情報を得るためにまずは聞き込みから入った。そもそもどこで聞きこむべきかわからなかったが、「それ」の情報をネットで調べるとどうやら新宿あたりで聞きこむのが適当らしいと分かった。(不確かなものが数件あるだけだったが、それ以外に全く「それ」の情報はなかった。)ここまで2年

「それ」について聞き込みを開始してから数か月がたったころ、一人「それ」の情報を知っている人がいた。Aさんとしよう。今まで数百人に聞いてもその存在すら知らない人しかいなかったので感動した。そしてさらに幸運なことにAさんはAさん以上に詳しい人を紹介してくれるらしい。

紹介により新たにBさんと出会った。彼はなんと「それ」を持っている人(Cさん)を知っているらしい。だが全く教えてくれる気配がない。仕方なくBさんを襲って脅迫により聞き出した。そしてCさんの情報を得た。

Cさんにコンタクトを取った。幸いBさんとは仲が良いわけではないみたいで、私がBさんにとった行動は知られていなかった。つまりCさんは私を警戒しなかったのだ。おかげで比較的早めに交流を深めついに「それ」を見せてもらえることになった。ここまででトータル4年近く費やしていた私はついに、ついに出会えると思い胸が高鳴った。しかし見せてもらって愕然とした。Cさんが持っていたのは「それ」の画像データのみだった。しかも、写真をさらに携帯で撮ったデータだった。全く足跡が辿れない。どこでこの画像を取ったのかと聞くとDさんに見せてもらったときにこっそり撮ったのだという。Dさんについて教えてくれた。Cさんの名前を出さないことを条件に。

Dさんにコンタクト。Dさんは「それ」の生写真を持っていることが漏れたことに大きな不安を抱いた。私もCさんとの約束があるのではぐらかしていた。しかし、それでは一向にその先を教えてもらえなかった。仕方がなくCさんから聞いたこと、画像の処理と今後Dさんに一切の危害が加わらないようにその生写真の処理をするとの契約をして写真の出どころを教えてもらった。

写真を撮ったというEさんの家に行った。Eさんはもう亡くなっていた。息子のFさんはなにか聞かされているようだった。Fさんに話を聞いた。Fさんは「それ」の保管場所を知っていた。ここまで大きく動きすぎて何組かの組織に追われていた私には情報を知るために信頼関係を作る時間がなかった。(CさんもDさんももちろん一般人ではないのだ、彼らとずさんな契約をしたのでこうなることは仕方がなかった。)Fさんの娘を人質にその場所を教えてもらった。

その場所についた。「それ」と出会えた。今まではこれを公にすべきだと感じていたが、目の当たりにしてわかった。これは外に出すべきものではないのだ。これまで出会った人たちがなぜここまでして「それ」の存在を否定し、隠してきたのか分かった。そして私もその人たちと同じ考えになった。

私はすぐに行動した。Fさん一家の命を絶った。「それ」を隠し場所に戻した。そして私も死ぬことにした。

私と同じように「それ」を探し始める人が出るだろうが、私の行動のせいで私が探した時以上に見つかりにくいものになっていることは済まないと思う。(というか、もう偶然以外では見つかることはないだろう。)でもわかってほしい。「それ」を目の当たりにすれば必ず考えが変わるはずだ。まぁ、そういわれ続けていたのに探し続けた私が言っても説得力は皆無だが笑。